君もブラック・メタルのロゴが作れる!(かも…?)

ムナーリの「木をかこう」のネタバレがあります。これから読もうと思っている方は注意してくださいね!


ブルーノ・ムナーリは著書において、モデュールという言葉を何度も訴えています。ある構造体を形作っているルール、というような理解でおおむねあっていると思うのですが、そうしたモデュールの一つに、名著「木をかこう」で記された、木を描くときのルールがあります。


すなわち、
・木は枝分かれするごとに細くなるということ
・枝分かれした、それぞれの枝の太さの和は、枝分かれする前の幹の太さに等しいということ
この2つです。(言葉で伝えると面倒臭いですねw)


「木をかこう」は、「この簡単なルール(モデュール)さえ守れば、誰でも簡単に木をかけちゃうよね」というムナーリ教授がニッコリしながら話しかけてくれているような素敵な本なのですが、こんなにもかわいらしい本に載っているルール(モデュール)も、使い方次第でextremeな表現を志向することもできるようです。


ベルギーのデザイナーChristophe Szpajdelは、Emperorなど、Death metal、Black metal界隈のバンドを手がけてきたデザイナーとのことです。私もこちらの記事でこのデザイナーの方を初めて知ったのですが、こうして彼の作成したロゴの数々を並べられると、ひたむきに「過激であろう」としたその姿勢のストイックさが、ある種の美学にまで到達していることが感じられます。

Vice Magazine - THE DARK LORD OF LOGOS
http://www.viceland.com/int/v15n11/htdocs/dark-lord-of-logos-302.php


特徴的に見られる傾向が、文字から装飾として広がる木の枝のような模様ですが、これを見たときにムナーリの木のルールが思い出されました。極限まで細かく分かれていく枝の数々は、ロゴから明快さ、モダンさ、シンプルさを完全に奪い去り、また当初には意図されていただろう過激さという地点さえ、ともすれば飛び越えて、冷徹さ、静謐な美しさをたたえているように感じられます。また、インタビューでは影響を否定していますが、アールヌーボーなどに見られる伝統的な唐草模様を、極限まで鋭利にしていったようにも受け取れます。


vice magazineのこの記事を知ったのは以下のLost at EMINORの記事からですが、この記事のこの言葉には全面的に賛成せざるを得ません!
"sometimes illegibility is the whole point. "


Christophe Szpajdel’s metal logos - New Design | Lost At E Minor: For creative people
http://www.lostateminor.com/2009/01/23/christophe-szpajdels-metal-logos/


木をかこう (至光社国際版絵本)

木をかこう (至光社国際版絵本)

モデュールに関しては、私の知りうる限りでは、こちらの本に記されています。

デザインとヴィジュアル・コミュニケーション

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