「大きさ」は相対的。

 春の夕暮れ、昇ったばかりの月の大きさに驚いたことはありませんか? ビルにかかる月の模様を確認したりします。どちらがウサギのあたまかな?


 しかし、月の大きさは昇ったときから中空で変化しているわけではなく、実は大きさは常に一定です。これは、中空にある月はサイズを比べる対象が無く、空全体と大きさが比較されるために小さく感じられ、他方、昇ったばかりの月は、木や建物など、地上の様々なものとの比較でとらえられるために大きく感じられるせいだ、といわれています。


 実際には直径3,500kmもある月が、中空でその大きさを感じないのは、もちろん地球から遥か遠く離れているからです。これがもし月が地球に近づいてきて、空を覆わんばかりに見えているのなら、その大きさは自明ですよね。空をキャンバスと想定してみれば、地に対しての対象物は、文字通り大きい方がその大きさが伝わるのです。地に対しての占有率が、サイズの見え方に直結しているといえます。


 一方で、空の端にある月の大きさを感じる、そのとき私たちは、対象物との比較において月の大きさを感じています。このような比較において大きさを感じるとき、その比較に差があればあるほど、大小の差は際立って感じられます。この見え方をうまく使えば、地への占有率とは別の次元で、大きさを演出して見せることができるのです。


 月の隣にビルが建っているのよりも、かごに来客を乗せた自転車がぽつんと浮かびあがっている、そのほうが、ずっと月の大きさ(そして逃亡者のささやかさ)が印象づけられること、あなたはもうご存知ですよね。


Question :
実物を見て、先入観とはサイズの印象が変わったものはありますか?