見えてくる順番を設計する。


 名刺のデザインは、新人デザイナーの習熟具合を見るのにうってつけの題材です。小さなカードに情報をどう配置するか。つまり、伝える情報を把握して、優先順に並べるということができるかどうか、一目でわかるのです。


 優先度の順で並べる、といっても、上から下へ(または右から左へ)杓子定規に配置する他に、様々なバリエーションが可能です。「会社名」より前に、「名前」をずっと大きい文字で置けば、名前の優先順位が高く表現されて、その人は会社名よりも個人の名前で勝負をしている、というニュアンスが出て来ます。そうしたニュアンスまで含めた様々な見え方を設計して、その人の総体を表現しようとする作業ですから、なかなか侮れない題材なのです。


 これが例えば雑誌のデザインであれば、雑誌のテイストによっては、読者の目線を動かすことで誌面に躍動感を作り出す目的で、タイトルをページの初めではなく、(縦組の本であったら右下などの)わざと中途半端な位置におくことがあります。定石通りの順序をずらして、画面に少し気取った雰囲気を感じさせることができるのです。しかし、そうした際にも、タイトルがまず一番に目を引くように、ページの中で一番大きいサイズで配置したり、それなりの空きの中に配置するなどの配慮が必要です。こうした配慮が、情報の優先順位の設計と言えるのではないかと思います。


 こうして、色や形、そして画面の中でのそれぞれの要素の位置関係を調節して、優先順位に従って情報が伝わるようにすることが、デザインがコミュニケーションとして成り立つための最初のステップといえます。


Question :
あなたの名刺で、最初に見えてくるものは何ですか?