文字のリズムを意識してみる。


 横丁の八っつあんとご隠居の会話ですが、八っつあんとご隠居で、文字の調子が違って見えますよね。八っつあんの話は息切れするような慌てた調子で、畳み込まれるように読まされる感じがするのに対し、ご隠居が慇懃に対応するような印象まで伝わりますでしょうか。これは八っつあんのせっかちな印象を文字を詰めることで、そして、それにゆっくり対応するご隠居の様子を文字の間を開いて見せることで、試しに表現したものです。


 また、こうしたリズムは詰めだけではなく、文字のサイズの差でも表現できます。見出しと本文のサイズの差が大きいと、見出しに注目が集まり、誌面に活気や勢いを演出できます。一方、このサイズ差が小さいと、文字組みには静かで丁寧な印象が生まれます。


 例えば冒頭の八っつあんの台詞なら、ご隠居の台詞より文字サイズを大きめに設定し、また、八っつあんの台詞自体のなかでも「てえへんだ」という部分を見出し的に大きくしたりすると、駆け込んできたような勢いをより強く表現できそうですね。また、そうした工夫が,加工の無いご隠居の文章の静かさをより際立たせるでしょう。


 何気なく流れている文章にも、文字の空きや詰め、そして大きさを調節することによって、表現したい内容にあった固有のリズム作って、個性を出すことができるのです。


Question :
もしもあなたの伝記が出るなら、文字はどんなリズムになるでしょう?